『石油最終争奪戦』 ― 2007年01月09日 10時20分41秒

石井吉徳著。なお、著者のHPはコチラです。
副題は“世界を震撼させる「ピークオイル」の真実”。
読んだ後で、著者がジャーナリストでもなく、エコノミストでもなく、社会学者でもなく、地球物理学者(東京大学名誉教授)であることに驚かされる。なお、石油ピークとは石油が減耗することであり、枯渇ではないという。
文明を支える「生き血」である石油に限りが見えてきたことから、日本国民は明治以来の欧米追従や呪縛から脱して、日本独自の脱消費(浪費)社会を構築すべきと説く。スリムだが強靭な「自然と共存する国家(分散型社会)」を育てたいとも述べる。
21世紀初頭、現代の社会で経済、社会は膨張の極に達し、人口も既に65億となったが(・・・1950年の26億人は2000年の60億人となっている・・・アジアにおいては中国が13億人、そしてインドが10億人、両国で世界の3分の1に達する・・・)、人口もエネルギー消費もまだ増え続けている。この指数関数的増大指向は永久には続きはしない。しかしさすがに石油は成長が止まり始めた。だが人間の数はまだ増えている。
21世紀はあるいは明日の社会は文明の一大変革を要求している。それは戦略的技術、戦略的な思考、理念で対応するしかない。リサイクル、クールビズなどは瑣末なことでしかない。このような部分をいくら集めても大きなモノとはならない。リサイクルという前に、工業社会への資源・エネルギーの投入量を減らすのである。・・・3Rの最初のReduceが最も大切である。・・・成長を望まない。これが未来への道程である。
・・・石油もガスも自然の圧力で噴出するもので、決して吸い出したりしない。しかし大勢の人は、地下にプールのように溜まったところがあり、文字通り、そこから吸い出すと本当に思っているようである。・・・自然を、地球を知らないで資源、環境、温暖化、いま地球が危ないなどと言う。いま危ないのは地球ではなく人間である。・・・
いやいや、そのとおりかも知れませんねえ。そして、石油以外のエネルギーである、主成分がメタンである天然ガス、オイルサンド、水素、バイオマス、原子力、メタンハイドレート、自然エネルギー(太陽、風、水力、地熱、海洋温度差、波浪、宇宙太陽発電)なども、何れ石油と同じピークを迎えるか、EPR(Energy Profit Ratio=エネルギー利益率、すなわちエネルギーの出力/入力比)も考え併せると、決して切り札にはならず、事実と幻想を整理すべきと一刀両断に切り捨てる。う~~ん、唸るしかないなあ。
・・・現在では1年間に300億バーレルもの石油が消費される。この量は最近話題のカスピ海周辺の総埋蔵量に匹敵するのである。一方、いまではその5分の1程度しか石油は発見されない。これでは石油生産がピークを迎えない方がおかしいのである。・・・2兆バーレルと言われる石油の可採埋蔵量、人類は今までにほぼ半分を使った。残りは半分だが、人間は採りやすいものから採っていく。そして条件の悪い、儲からないものを残す。あとの半分は、今までの半分とは違うことを認識すべきである。資源は質が非常に大切なのである。・・・そして今、世界の石油ピークは2010年より前にくると私などは考えている。・・・石油の世紀は21世紀初頭で峠を越すようである。・・・
・・・中東の中心は、最大の埋蔵量を誇るサウジアラビアだが、その世界最大の油田ガワールは日産450万バーレルと巨大である。長さは200キロメートル以上、幅2、30キロメートルもある。・・・日本地図に投影させると東京から福島あたりまで続く長さだ。・・・だがこの油田も60歳の老齢となった。さすがに衰え、今では自噴圧力の維持のため、毎日700万バーレルもの海水が油層内に圧入されている。そのため生産される石油とともに30%もの水が付随するようになった。・・・
ええ~~っ、それなら無理やり搾り出しているようなもんですね。ホント大丈夫なんですかねェ。
・・・石油ピークは「農業、食料ピーク」でもある。石油問題は食糧問題であることを理解しておかなければならない。・・・
・・・2002年9月開催された国連のヨハネスブルグ・サミットの最終日、アナン事務総長は「WEHABそしてPが大切」と総括した。これはWater(水)、Energy(エネルギー)、Health(健康)、Agriculture(農業)、Biodiversity(生物多様性)、そしてPoverty(貧困)のキーワードの頭文字をとったものである。手段、道具でなく、問題解決型の科学をいま世界が求めているという意味であろう。・・・
21世紀を「分散の世紀」、「自然へ帰る世紀」としたい。
考えさせられますねえ~。日本の食糧自給率はめちゃくちゃ低いし。まずは人類が、いやいや日本そのものが危ないんじゃないだろうか?石油・天然ガスなどの化石燃料は、なくなれば二酸化炭素などの温暖化効果ガスの放出も減って、地球温暖化問題も徐々に収まっていくようにも思えるし。でも、やっぱり甘いかな。そうすると、いろいろ一緒によく考えて、各自の意識をきちんと変えて、出来ることからコツコツと対応していかなくちゃいけないんでしょうね。
それにしても真剣に考えれば考えるほど我々の周りにはとても大きな問題が山積しています。
でも諦めずに生きていかなくちゃ。
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