『強毒性新型インフルエンザの脅威』2006年12月05日 17時23分50秒

藤原書店発行(定価1900円+税)


 国立感染症研究所研究員の岡田晴恵氏編。

  1918年に大流行した新型インフルエンザ(通称スペイン風邪)は、日本の推定死亡者数約45万人以上(当時の全人口は5500万人)とも言われている。この死亡者数は5年後の1923年に発生した関東大震災の死者の実に5倍近くに相当する。しかしながら、その悲劇についてはあまりこれまで見聞きしたことはない。本書中には当時の新聞記事が多く挿入されているが、それらを読むと社会や人々の混乱や狼狽ぶりがみて取れる。

 また、犠牲者の年齢分布には目立った特徴があったという。即ち乳幼児期までと10歳代~30歳代に偏っていたのである。この理由は生体の防御免疫機能の過剰反応(サイトカイン・ストーム)と示唆されている。健康だった年齢層のヒト程重症化して死亡する危険性が高かったということか?それにより当時の社会人口構成が歪んだというのだ。

 実は、このスペイン風邪も過去の新型インフルエンザと同様、鳥インフルエンザから生じた。スペイン・インフルエンザ・ウイルスの遺伝子構造解析から、鳥型ウイルスから人型ウイルスに変身したことが既に明らかになったという。

 現在の「高病原性鳥インフルエンザ」について、殆どの人は単に鳥のインフルエンザであり、たまたま病鳥に接触するなどしたヒトに感染するのだとの認識ぐらいしかない。しかし、著者は、強毒性ウイルスによる、従来のインフルエンザとは全く異なる重症疾患で、「鳥家禽ペスト肺炎」や「急性全身性多臓器不全症候群」というべきとの専門家の議論があることを述べている。

 これまでの認識を全面的に変えねばならないようだ。

 ちょっと強いインフルエンザなんだと軽く思わずに、少なくとも自分と家族を守るために、在り来たりではあるが手洗いや嗽の励行、マスク着用(もちろんウイルス防御機能付きのもの)などの予防の徹底と、流行時の不要不急の外出の自粛、それに正確な情報の収集と理解など心がける必要が大いにあるようだ。

 なお、本書には「新型インフルエンザ対策備蓄品リスト」が附録として記載されている。

コメント

_ mz ― 2006年12月08日 22時24分11秒

この本は1ヶ月くらい前に私も「見ました。」
お医者さんが購入してましたよ。
へぇ・・こんな本があるんだと思ってパラパラっと見ただけです。だって難しそうだったから。
マイペンラーイ2さんはいろいろな本を読まれるんですね。

_ マイペンラーイ2 ― 2006年12月10日 21時24分10秒

こんばんわ、mzさん。

世界のあちらこちらでニワトリなどが何十万羽も死んで、人にも感染して死亡者が出たというようなニュースを見聞きしている内に、たかが鳥のインフルエンザなのに何故各政府がそんなに必死になって死亡したニワトリの処理やらウイルス対策をやっているのか不思議に思い、鳥インフルエンザについていろいろ関係する本を読むようになりました。そうしたら、大正時代に大量の死者を出したスペイン風邪も実は鳥インフルエンザであったと分かって、現代の鳥インフルエンザもかなり危険なんじゃないかと思った次第です。心配だけで済めば良いのですが。

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